コンサート情報
 

 

 
自身によるプログラム解説 


2004年と2005年に行なった日本でのピアノ・コンサート用に書いた曲目解説
から、抜粋して掲載します。扱っている曲は以下の通りです。
(著作権は執筆者が保持します。)


モーツアルト、ソナタ イ長調(トルコ行進曲付き)
ベートーヴェン:アンダンテ ヘ長調 WoO 57
ショパン、ノクターン 作品62の2 ホ長調
ショパン、幻想ポロネーズ
戸口純、子供の午後 
ラヴェル、組曲「鏡」から、「悲しき鳥」「大洋の小舟」「道化師の朝の歌」
プロコフィエフ:ソナタ第6番
プロコフィエフ、ソナタ第7番
ショパン、12の練習曲(第2巻)作品25



モーツアルト、ソナタ イ長調(トルコ行進曲付き) K.331(K.300i) 

 従来は1778年夏、パリで作曲されたものとされていたが、最近の研究で説が変
わり、モーツアルトは、1783年頃、おそらくウイーンにいる時、このソナタを書
いたらしい。そのうち、1785年頃、熱海にいる時、書いたことになるかも知れな
い。 

 どの楽章にもソナタ形式を使っていない点、他にあまり例を見ない。

 第1楽章は子守唄風の美しい旋律を主題とする変奏曲。主題は、図式化すれば、前
半 a(4)+a'(4) 後半 
b(4)+a''(4)+ext.(2)[括弧内は小節数]のようになる。前半も
後半も繰り返しがある。後半は少し新しい内容のあと、冒頭の旋律が回帰し、それが
2小節延長されて終了。この主題のあと、6つの変奏が続く。第3変奏は同名短調、
第5変奏はアダージョで。最終の第6変奏で、快活なアレグロとなり、勢いよく終わ
る。 

 第2楽章は、複合三部分形式でメヌエット、トリオのあと、またメヌエットに戻る。
第1楽章と同様、イ長調。中間部のトリオは主にニ長調。中間部では、第1楽章の第
4変奏に登場した左右の手を交差させるテクニックが多用されている。

 第3楽章にトルコ行進曲が書かれたのは、モーツァルトの頃、トルコの音楽、特に
軍楽がオーストリアに広まっていたせいだろう。17世紀にトルコがポーランドやオー
ストリアと戦争をし、トルコによるヴェネーツィア共和国東方のカンディア占領など
もあった事実と関わっている。モーツァルト時代のピアノフォルテには、今のペダル
のように足で操作できる打楽器的な装置の付いているものがあった。 
この曲の演奏には、それが使われたであろう。

 

 大変有名なソナタであるから、これ以上、部分について詳述しない。全体として、
よく出来上がった作品。アマデウス君に百点花丸をあげたいと思う。こういう作品を
書いたことに、人類を代表して誰かが、「ありがとう」と「おめでとう」を言ってく
れたらよいのだが、人々が後世まで、この曲を弾き続けることで、それはもう為され
ているのかも知れない。

 

 モーツアルトの演奏に際して、様式を考慮するとは、例えば、古典的な整ったリズ
ム感、テンポ、ペダル法、ダイナミックスの範囲等に則って、あるところはオペラチッ
クに、あるところは室内オーケストラチックに、またあるところはピアノフォルテの
ごとく、または協奏曲チックに弾いたりすることだろうが、全体として柔らかな歌声
のアリアが曲を支配しているのは、彼の tenderness をよく表している気がする。
モーツアルトは、音楽は激しいものを表現する時も、人の神経を逆なでするようであっ
てはいけない、耳にやさしくなければいけないと言ったそうだ。だからこそ、我々も
素直にありがとうと言いたい気になるのかも知れない。

 

ベートーヴェン:アンダンテ ヘ長調 WoO 57

 

 ベートーヴェンは32曲のソナタのほかに、大小の変奏曲と舞曲を除いても数十曲
の小規模のピアノ曲を書いている。それらのうちには、バガテルとして数曲ずつまと
められているもの、いくつかのソナチネ、ロンド、また、一般に「エリーゼのために」
として知られている小曲が含まれている。だが、このエリーゼというのは、彼の字が
汚なかったための読み違いで、献呈された女性は別の名前だったという説がある(ベー
トーヴェンは乱筆で、校正の際は、入念に音や記号の誤りをチェックしなければなら
なかった)。そうだとすれば、彼は天国でも、髪をかきむしって怒っていることだろ
う。 

 このヘ長調のアンダンテは変奏曲であるが、ABA’CA” 
というように、テ-マAの変奏のあいだに他の素材が挟まれており、構成としてはロンド的である。

 A は a+b+c+a’で計30小節、B の部分では、ハ長調に転じ、C 
は変ロ長調である。 

 変奏の方法は第5交響曲「運命」の第2楽章に似ており、バスのラインが、テーマ
の8分音符から、第1変奏では16分音符に、第2変奏では32分音符にと、より細
分化される。これらに続くコーダ部は長く、32分音符の刻みが音楽を引き続き前進
させるが、その合間に主題の中心部分が回帰し、またその結尾は拡大される。そして
コーダの終わりにはドーダ!とばかり、ベートーヴェンらしく変ト音の半音のずれが
登場し、聴き手を少し驚かしてから(作曲家を自己満足させてから)またヘ長調に戻
り、静かに終わる。 

 


ショパン、ノクターン 作品62の2 ホ長調

 ショパンの最後のノクターン(作品62の1のロ長調もなかなか名曲である)。い
ぶし銀のようで、派手さはないが、その、深く人生を振り返って語るような旋律は、
心に沁み入る。基本的な構成は ABA の三部分形式で、中間部は嬰ハ短調から始まリ、
大きく揺れ動く。再現の際は、A の部分の後半にある推移的な部分が、うまくコーダ
として機能し、静かにゆっくりと終わる。夜の底に沈み込んでゆくようだ。

 

ショパン、幻想ポロネーズ 作品61 変イ長調

 ショパンがこの第7番目の変イ長調のポロネーズを「幻想ポロネーズ」と名づけた
のは、この曲の雰囲気が幻想的ということにもよるだろうが、形式上、相互に関連の
薄い要素が次々と連結されてゆく風[フウ]だからだろう。バッハ、モーツァルトの
時代から、形式的に自由なそのような曲を幻想曲 fantasie と呼ぶ習慣があった。
さまよった上でようやく現れるこの曲の誇らかな終結部では、以前にポロネーズのリズ
ムの上に現れた静かなテーマが ff で鳴らされ、次には、中間部のゆっくりとした静
かなセクションも、移調され、ff で鳴らされて終末へと流れ込む。このように、自
由に見える一方、統合性も高いのは、この作品の優れた点といえる(形式上の自由な
書法は、この曲に限らず、彼のバラードなどにも見られる)。

 幻想的といえば、和音の機能よりも、ひとつ、あるいは混ざった和音の響きを、響
きそのものとして聴かせようとする意図がところどころに見られ、印象派音楽を先取
りするような色彩感覚がうかがえる。単純なポロネーズとはもはや呼べないこの曲
(1845-46年作)は、ショパンの後期の名作で、同時期には、作品62の最後
の2曲のノクターンなどが書かれた。

 

 

戸口純、子供の午後 

 最近、子供にちなんだピアノ曲を作曲してきた。森洋子先生から「シャボン玉組曲」
作曲の御依頼を受けたこと、レバノン人の友人からも子守唄の作曲を頼まれたことが
大きなきっかけで、「子供の午後」はそれらの新しい仲間といえる。

 第1曲は小学校(?)から帰宅したが、友達と外に遊びに行きたくて落ち着かず、
空想の中で、楽しいシャボン玉、すべり台、シーソー遊びなどを思い描いている子供
の様子。これらの遊びを意味する音の素材も現れる。この組曲は、全曲が 
F、G、A、C、D-flat、D、E-flat の7つの音列とその移調型を基礎にできており、
第1曲のイントロは、そのFから始まる音列の7音のみでできている。第1曲では、F 
のほか、B-flat 上、C 上の音列を使っているが、その他の要素も混入しており、また、
調性的には、ハ長調とイ長調の複調という要素も併用。

 第2曲以降、この音列の適用はもっと厳格で、「音のリレー」では、4人の走者が
バトンを持って次々と走るが、第1走者 B音列、第2走者 G音列、第3走者 
C音列、第4走者(アンカー)E-flat 音列でできている。第3曲「雲と幻想」の中間部
(やや幻想的なところ」ではG音列を使用しているが,G調には聴こえず、
A調に聴こえる。

 第4曲はわらべ歌風の人工の旋律をつなぎ合わせた手まり唄であり、曲中で「あん
たがたどこさ」も現れる。また伴奏の左手の型はブギウギのようになっている(和洋
折衷!)。この手まり唄中で使っている音列はE、F、G、A 上の4つで、次々と唄が
変わるのでメドレーのようにも聞こえるかもしれない。リズムを変えたり、玉のつき
方、投げ方を変えたりと様々な手まりテクニックが披露され、それらが、演奏者の姿
に視覚的に現れたらおもしろいだろうと、部分的に工夫も施した。

 

 

ラヴェル、組曲「鏡」から、「悲しき鳥」「大洋の小舟」「道化師の朝の歌」

 「悲しき鳥」は、群れと共に、渡り鳥として大洋を渡るが、そのうち、中途で力尽
きて落下してしまう鳥達のイメージを描いた曲。ゆったりとした海の佇まいとともに、
鳥の羽ばたきや啼き声が聞こえてくる。

 「大洋の小舟」で描かれるのは、様々な色に変容する海の表面の輝きと、時折押し
寄せる大きなうねり、そしてその上に浮かび、なすがままにされる小舟の情景。曲の
最後で海はまた穏やかになる。

 「道化師の朝の歌」は、バンジョーを奏でる道化師のおどけたリズミカルな音楽で
始まり、中間部は、アラビアの響きも想い起こさせる歌声と遠くから聞こええる祭り
(fiesta フィエスタ)の騒音が遠近法で描かれ、やがてまた、冒頭のリズムの再現
が最弱音から開始されクレシェンドを続けていって緊迫感のある(stringendo)コー
ダへとなだれ込む。 

 
「鏡」の初演後の1906年1月、批評家のピエール・ラロが、ラヴェルは才能あ
る作曲家だが、ドビュッシーに似すぎていて、「ペレアスとメリザンド」の断片を聴
いている錯覚にさえ捉われると述べたのに対し、ラヴェルが、自分が「水の戯れ」を
出版した時点、1902年に出版されていたドビュッシーの楽譜は「ピアノのために」
くらいで、そこには純粋にピアニスティックな観点から言えば、ドビュッシー自身の
発見のようなものはほとんど見出せない、等と言って、自己の音楽語法のオリジナリ
ティを弁護したのはよく知られた出来事である。私は、ラヴェルのピアニズムや和声
法その他にショパンやリストからの影響も強く聴き取るが、いずれにせよ、音楽語法
は歴史的継続と発展の中にあるものだし、ラヴェル自身、模倣の持つ意味を認める発
言も残している。そして、100年経った今、我々が感心するのは、何ものでもない、
ラヴェルらしさ(彼の強い個性)なのだから、仕事は成功したのだ。
 


プロコフィエフ:ソナタ第6番 作品82

 

 このソナタは演奏時間30分を超える長大な4楽章のピアノ曲である。プロコフィ
エフは第6、7、8番の3曲のソナタをほぼ同時期(1939ー44年、第6番は1
941年に完成)に書いているが 、それはベートーヴェンの後期のソナタの書き方
に刺激を受けてということである。彼の音楽言語が成熟し満開となている頃で、オ
ペラ「戦争と平和」も作曲していた。彼の“傑作の森”の時期と言ってよいかも知れ
ない。ピアノ・ソナタ3曲は、まとめて 戦争ソナタと呼ばれることもある。

 第1楽章では、リズミカルで暴力的ともいえる冒頭から半音のうねりによる推移部
を経て、第2テーマはpでミステリアスな響きを奏でる。展開部は第2テーマの頭を
とって対位法的に始まり、緊張感のある連打音に支えられ、やがて激しいフォルテへ
と移行してゆく。ここでは第2テーマだけでなく第1テーマの要素や推移部の半音の
うねりの動機も使われ、第1テーマのミ・レ・ド#という速いパッセージは執拗に繰
り返される。これはユーモアなのか、それとも、ただおいしい団子(だんご)はいく
らでも食べたいという異常食欲なのかは不明だ。この団子は第4楽章にも登場する。

 第2楽章はアップ・テンポのサーカスの音楽をイメージさせる曲であり、調、雰囲
気や音のテクスチャーは変化しても、全体は冒頭の主題の繰り返しでできているといっ
てよく、それに、やがて低音で現れる力強い3度の堆積からできているラインが方々
で組み合わされる。 

 第3楽章はワルツ・レンティッシモ。大変おそいワルツで、私がこのソナタに最初
に引きつけられたのは、この楽章の美しい旋律であった。ABAの3部分形式。

 第4楽章は自由なロンド形式でヴィヴァーチェ。中間部でテンポはアンダンテとな
り、第1楽章のテーマ(団子の動機?)が回帰する。そのセクションのあとは、また
ロンドの最初のテーマが高速度で変幻自在に飛び回り、演奏者の頭と手は大忙しとな
る。またロンドの第2、第3のテーマ(より静かに)も再度現れ、最後は最初のテー
マの変型のあと、コーダ部では、あたかもキエフの町中の鐘が打ち鳴らされるごとく、
狂気を孕んだ大音響となる。そして、お待ちかねの団子がぞろぞろ再登場、ff 
で町の空に花火のごとく打ちあがり、終了する。

 

 

プロコフィエフ、ソナタ第7番 変ロ長調 作品82
 1941ー43年に書かれた名作である。そして当然、有名でもある。同時期に書
かれた第6番や第8番のソナタより、コンパクトで、冗長な感じがないだろう。

 形式は、第1楽章はソナタ、第2楽章は三部分、第3楽章は ABCBA 型。第2楽章の
ゆっくりしたワルツを挟むのは、リズムの切れ鋭い、2つのアップ・テンポの楽章である。 

 第1楽章は変ロ長調と言っても、変ロ長調なのかどうかはわからない。ワープロで
「遍路」と出てきたが、そんな感じだ。半音進行の要素の強い第1主題で、不気味、
あるいは謎めいた始まり。この主題の音の並べ方は、バルト-クの「弦楽のためのセ
レナーデ」の出だしや、あまり知られてはいないが、隠れた名曲、ショスタコ-ヴィッ
チのピアノソナタ第1番の主題に似ている。第2主題は、高音部で曲線的に、より歌
唱的に現れる。そして、p で始まり、強烈な邁進力を持って突き進む展開部(ここ、
難しいんだよねえ、プロコちゃん) 、再現は、第2主題の少し前(推移部の素材)
から現れ、第2主題は、一全音上で奏される。コーダはプレストで(プロコちゃん、
ここも...もう居ない人に文句言っても仕方ないな)、そこで第1主題が回帰、繰
り返し断片的に現れ、最後は静かに、低音で打楽器的に終わる。

        

 プロコフィエフの和声法は、ラヴェルと似た部分が多いように思われる。調性音楽
の基本和音(三和音に加えて減7和音や、7度、9度などの和音)とそれらの半音の
ずらしが基礎になっているのは、分析してみると分かる。ただ、彼のほうが時代が進
んで前衛的な響きがするのは面目躍如なのではあるが、それでも、つまるところ、彼
にも、調性を崩壊させよう、あるいは別の方法で包括しようというスタンスはない。
また、両者とも、古典的な形式の使用に抵抗を感じていなかった。この二つのことは
密接に絡み合っていると言える。元々ソナタ形式などは調性に基づいた形式構造であ
るから。こうした意味では、ラヴェルもプロコフィエフもドビュッシーほど革命児で
はなかった。 

 

 第2楽章は、よく歌う旋律で始まるワルツだが、中間部は、変奏や、動機の移調な
どの手法も使って自由で壮大な展開を見せ、再現は短い。

 第3楽章は、2+3+2の変拍子が最初から最後まで支配し、ロック音楽の先駆け
のようだ。(形式上の)B は右手にオスティナート型が移るところから、(形式上の)
Cはホ短調になるところで始まり、やがて B が回帰し A が回帰する。A は大音響と
なり、かっこいい都会の工事現場となって終了。私が習ったロシア人のニーナ・レル
チュク先生によれば、左手のしつこいまでのオスティナートは、相方が何を言っても
同じ事を鸚鵡[オオム]のように繰り返すコメディアンだそうだ。ピアニストのアシュ
ケナージは、作曲家はこの楽章を、戦車の邁進のように捉えていたかもしれないと述
べている。確かにこの曲が書かれたのは、まさにそうした時代であった。

 


 

ショパン、12の練習曲(第2巻)作品25

 

 ショパンは1837年に、すでに作曲してあった12曲を纏め、練習曲集第2巻
(作品25)を出版した。1839年に出版された「24の前奏曲」(作品28)と
同じようにバッハの「平均率クラヴィーア曲集」の影響が強く感じられるこの曲集は、
音楽論理の緻密な追求という意味においても、優れた作品だと私は思う。

 

 曲想としては、第1巻に比べ、第2巻のほうが重たく暗い曲が増えているようだ。
第1巻では、長調と短調がほぼ交互に並べられていたのに対し、第2巻は12曲中8
曲が短調である。もっとも、そのうち第5番と第8番はエスプレッシーヴォで歌われ
る中間部分を持ち、そのどちらも長調ではあるが、短調の主要部分に挟まれて、あま
り明るい感じはない。前奏曲と違い、1、2巻を通しても、使われている調(キー)
は、エンハ-モニックに読んで - 異名同音を一つと数えれば - 九つで、「平均率」
のようにすべての調を網羅しているわけではない。長調、短調の平行調を組み合わせ
ていって全部の調を網羅するという方法は、結局練習曲では為されず、少しあとの前
奏曲集に持ち越されたのだろう。そのかわり、第2巻の終曲のハ短調の練習曲の最後
をハの長3和音で締め括った時[ピカルディー終止]、終わりは初めとなって24曲
は一つのサイクルとなり、作曲家は笑いをこらえたに違いない。

 その第2巻の終曲で使われているピアノの技法は、第1巻の第1曲に酷似している。
それは、バッハの「平均率」の冒頭のハ長調の前奏曲のように、アルペッジョの形態
で和声が変化してゆき、外声が旋律として聴こえるという、言ってみれば和声の宿題
に毛の生えたようなもので、これをハ長調とハ短調でやっている。ハ短調のほうは、
バッハの「平均率第1巻」のハ短調の前奏曲に影響されているかも知れないし、また
考えてみると、その前奏曲は、練習曲集第2巻の第1番(変イ長調)のアルペッジョ
の方法をショパンに思いつかせたかも知れない。ショパンのようなピアニスト兼作曲
家は、頭や耳だけでなく手でも作曲するはずで、先輩の作曲家の影響はその手に強く
出るはずなのだ。 

 

 この第2巻には3度と6度と8度[オクターヴ]の練習曲が含まれていて、特に3
度の練習曲は難曲だが、取り組んでみて些か発見があった。例えば半音進行で上下す
る部分について考えて見ると、指が5本あることの意味を改めて考えさせられる。3
度の重音の場合(譜例1参照、譜例2は半音下降の場合)



譜例1 パデレフスキー版、第18曲、5ー6小節を御覧下さい。


譜例2  
パデレフスキー版、同曲、57小節の3拍目ー58小節を御覧下さい。

 

右手であれば3[中指]と4[薬指]がかわるがわる高い音の半音を受け持ち、1
[親指]と2[人指し指]は低いほうの音を受け持つが、そのうち2と3は長いので、
より黒鍵に適している。 そうすると白鍵と黒鍵が交互についているかぎり、白鍵は
1と4の指が受け持つことになるが、ピアノには白鍵が連続する場所がある(EとF、
BとCの間)。そこで高いほうでは5[小指]が4を引き継ぎ、低いほうは1が2音
続けて隣の分まで弾くか、あるいは2をその前の黒鍵から滑らせて最初の白鍵も担当
させる。そうすれば続く白鍵は1で弾ける。これは5本の指とピアノの鍵盤の形態の
関係の問題の合理的な処理の一例だが、そもそも指の数が違ったら、楽器の形などず
いぶん違うだろうし、音楽そのものも - 声楽はともかく器楽は - 異なっているに
違いない。 

 私は昔から認識の形態、そしてそれから派生するすべてのことは肉体の形態によっ
て限定を受け、それによってしか起こり得ないという考えなのだが、また同時に、大
自然の一部としての人間の肉体の所与は、宇宙の在り方の本質を、最低一つの形で具
現しているに違いない。そう思って近くにいた犬の手(前足)を見たら、彼の指もま
た5本だった。君も同じね、ワン。

 さてオクタ-ヴの場合(第10番)は、手が大きく開いているから1と2が交替で
半音を弾くことはできず、右手の場合、低い方の音(左手なら逆)は全て1が担当す
る。また3も使用しにくいため、高いほうの半音は、黒鍵は4、白鍵は5の担当が原
則となる。 

 

譜例3 パデレフスキー版、第22曲、5ー6小節を御覧下さい。

 

6度の場合も原理は同じで、手の開き方は、3度とオクタ-ヴの中間、もし高いほう
の音を弾くのに右手の3を使うと、2は使えなくなって低いほうはオクタ-ヴの時の
ように1の連続となる。

 第11番の「木枯らし」も、片手に半音進行(下降)と分散させた和音という二つ
の要素を速いパッセージで弾かせるという、論理的に明解な構成で、こうしてみると、
第2巻の第6、8、10、11番はピアノの技巧上の共通項を持つといえよう。しか
しこれらがそれぞれ音楽的に強い個性とアピールを持ち、霊感を伴ったキャラクター
ピースとなっていることには感心するほかない。                
                                      
                                     
(戸口純) 

御質問や転載の御希望はjunt@erols.com までお願いします。

4月16日
コンサート川崎サロン
開場6:30開演7:00
4000?  パーティ−込み
井の頭線西永福町駅徒歩4分
川崎邸 杉並区永福3ー28ー6

お問い合わせ
MLC33457@nifty.com 川崎様

◆4月
17日荻窪カンゲイ館 開場6:00開演6:30 
3000円 全席自由  完売しました

荻窪駅出口から徒歩7分 電話03ー5347ー2668
杉並区荻窪3ー39ー14 区立中央図書館、区立体育館前
お問い合わせ 
花の会 磯様 03ー3707ー6536 
山口様 042ー388ー8266

◆岡山公演
2005年   4月20日(水)開場6:00pm 開演6:30pm
岡山県立美術館ホール 〒700-0814 岡山市天神町8-48 ☎086-225-4800
入場料/¥3,000円(全席自由)
チケット販売:電子チケットぴあ ☎0570-02-9999(Pコード 193-120)
お問い合せ:岡崎様 ☎086-225-4596 
*未就学児の入場はご遠慮ください

◆京都公演   (財)青山財団助成公演
2005年   4月22日(金)開場6:30pm 開演7:00pm
青山音楽記念館(バロックザール)
〒615-8282 京都市西京区松尾大利町9-1 ※ 阪急電車嵐山線「上桂」駅下車西へ300
メートル
入場料/¥3,000円(全席自由)
チケット販売: 青山音楽記念館 ☎075-393-0011 
      電子チケットぴあ ☎0570-02-9999(Pコード 193-112)
お問い合せ:青山音楽記念館 ☎075-393-0011
受付時間 9:30〜18:00(月曜日・火曜日休館)
*未就学児の入場はご遠慮ください

4月
30日新潟県民文化会館Aホール
ピアノリサイタル
お問い合せ:菅又様 025ー222ー5306

5月7日ウテルスホール
戸口純 ピアノリサイタル
北九州市八幡西区東筑1−6−22
Tel (093)691-3474  Fax(093)693-6055
mail@uterushall.com
http://www.uterushall.com


プログラム
川崎サロン
モーツアルト K.333 ソナタ 変ロ長調  
ショパン 練習曲 作品25の11「木枯し」
ショパン 幻想ポロネーズ 変イ長調     

戸口 組曲「子供の午後」から
  子供の午後/音のリレー/雲と幻想/手まり歌                                                                    
 「シャボン玉の組曲」から数曲                                                        
 「ブラームスに捧ぐ」                                                                                       
ラヴェル 「鏡」から 道化師の朝の歌 

荻窪カンゲイ館
モーツアルト K.331ソナタ イ長調 トルコ行進曲付き
ショパン 練習曲2曲 作品10の5(黒鍵)と作品10の12(革命)
ショパン ノクターン ホ長調 作品62の2
ショパン 幻想ポロネーズ 変イ長調

戸口 組曲「子供の午後」から
  子供の午後/音のリレー/雲と幻想/手まり歌
ラヴェル 「鏡」から 悲しき鳥、大洋の小舟、道化師の朝の歌
即興演奏

岡山、京都

岡山県立美術館ホール、青山バロックザ−ルホール

モーツアルト K.331ソナタ イ長調
戸口 組曲「子供の午後」
ショパン 幻想ポロネーズ 変イ長調

ラヴェル 「鏡」から 悲しき鳥、大洋の小舟、道化師の朝の歌
プロコフィエフ ソナタ第7番 変ロ長調
即興演奏

新潟・北九州
新潟県民文化会館・ウテルスホール
モーツアルト K.331ソナタ イ長調
ショパン 練習曲 作品10の5(黒鍵)と作品10の12(革命)
ショパン ノクターン ホ長調
ショパン 幻想ポロネーズ 変イ長調

戸口 「シャボン玉の組曲」から数曲
ラヴェル 「鏡」から 道化師の朝の歌
プロコフィエフ ソナタ第7番 変ロ長調
即興演奏
 

 

 
 

 

 

 

 

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